こんにちは。
管理栄養士のはっつです。
前回、水分をどれくらい飲むかはお伝えしました。
伝えたいことが多くて、盛りだくさんになってしまいました。
今回も盛りだくさんになりますので、よろしくお願いします。
「何を飲んだらいいか」の前に、脱水についてお話します。
少し難しい内容です。
脱水は失われた成分によって3つに分類されます。
①水欠乏性脱水(高張性脱水)
②ナトリウム欠乏性脱水(低張性脱水)
③混合性脱水(等張性脱水)
があります。
【①水欠乏性脱水(高張性脱水)】1)
水分だけが欠乏するので血管内の血液は濃くなります。それを薄めようとして細胞内から水分が移動して細胞内液が欠乏し、脱水が起こります。
水分不足の災害時や遭難、嚥下や意識レベルに問題があり、水が飲めないのに輸液がおこなわれなかった時などに起こります。
【②ナトリウム欠乏性脱水(低張性脱水)】1)
下痢や嘔吐、激しい発汗などでナトリウムが喪失したときに起き、細胞外液が薄くなり、細胞外液から細胞内への水分の移動が生じて細胞外液が欠乏して起こる脱水です。電解質異常が起こるので、神経系の症状が多いことが特徴です。
【③混合性脱水(等張性脱水)】1)
身体の水分とナトリウムが同じタイミングで不足して起こります。出血、下痢、熱傷などにより細胞外液が急速に失われること起こる脱水です。口渇感があるため、水分摂取し、ナトリウム欠乏性脱水に変化することがあります。
脱水のアセスメントとして、下記の視点があります。
口渇は脱水の初期にあらわれます。ナトリウム欠乏性の場合は口渇を感じにくいです。
高齢になると口渇を感じにくくなるので、注意が必要です。
倦怠感や立ちくらみは重度になると生じます。
より進行すると意識レベルの障害(興奮や傾眠など)があらわれます。
意識レベルの障害があらわれたら、かなり重度の脱水です。
口腔粘膜(口腔内や口唇)の乾燥がみられたら、水欠乏性脱水を疑います。
皮膚の緊張度をみるためにツルゴールテストをします。手の甲(難しい場合は鎖骨下)の皮膚を軽くつまみ、指を離します。正常では皮膚がすぐに戻りますが、水分が少ない場合はすぐに戻らず、つまんだ形のままになります。2秒以上続く場合は緊張度が低下しています。
(https://www.os-1.jp/dehydration/elder/images/howto_img_01.jpg)
高齢になると、脱水でなくても緊張度が低下していることがありますので、普段の状態を知っておくことが必要です。
皮膚温は手背で上腕の皮膚に触れます。循環障害がある場合は、障害のある側のみ冷たいです。脱水の場合は両側冷たくなります。
水欠乏性の場合、尿量が減ります。ナトリウム欠乏性の場合は尿量に変化がみられにくいです。
表以外に、手を心臓の高さに上げて、手の爪を白くなるまで押し、離します。元の色に戻るまでに2秒以上かかる場合は脱水を疑います。1)
体重も指標になります。
では、「脱水かも?」と思ったら、何を飲んだらいいでしょうか。
水?お茶?スポーツドリンク?経口補水液?コーヒー?アルコール?
日常生活で摂取する水分のうち、飲料として摂取すべき量(食事等に含まれる水分を除く)は1日あたり1.2 ℓが目安とされています。発汗量に見合った量の水分の摂取が必要です。
また、大量の発汗がある場合は水だけでなく、スポーツ飲料等の塩分濃度0.1 ~ 0.2%程度の水分摂取が薦められます。
運動時や労働時 に失った水分を十分飲水できない場合が多いので、翌日までに十分な水分摂取が必要です。なお、入浴時、睡眠時も発汗していますので、起床時や入浴前後は水分を摂取する必要があります。2)
スポーツドリンクや経口補水液を、日頃から摂取している方はいるでしょうか。
経口補水液とは、所ジョージさんがCMしている飲料などです。
経口補水液は、軽度から中等度の脱水状態の不足している水と電解質を、
素早く補給できる飲料です。
よって、大量に汗をかいた時はスポーツドリンクや経口補水液は必要だと思います。
しかし、通常の水分補給にはお茶などで良いです。
スポーツドリンクや経口補水液は、500mlあたり50~100kcal、塩分0.5~1.5gです。
大量に汗をかいていない方が、日常的にスポーツドリンクや経口補水液を飲んだらどうなるでしょうか?
例えば、目安となっている1.2L分をスポーツドリンクや経口補水液で摂取した場合、
1日で120~230kcal、塩分1.2~3.6gを摂ったことになります。
毎日続けていたら、約1ヶ月で体重が1Kg増える計算になります。
また、塩分は毎日味噌汁を約2.5杯を摂ったことになります。
よって、高血圧、腎臓病、糖尿病などがある方は医師への確認が必要です。
ある経口補水液のサイトには「健康な場合に飲んでいただいても結構ですが、健康状態がさらによくなるものではありません。」と記載がありました。
大量に汗をかいたり、脱水状態の時はスポーツドリンクや経口補水液、
それ以外の時はお茶などと使い分けるのが良いでしょう。
何を飲んだらいいか分かったところで、
次回は熱中症についてお話したいと思います。
(引用・参考文献)
1)角濱春美:フィジカルアセスメント.メディカ出版,2013
2)環境省環境保健部環境安全課、熱中症環境保健マニュアル
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