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消化器外科手術後の食事について


消化器外科術後の食事について。まず、術直後なのかそうではないのかで全く様子は異なります。まずは今回の発症契機になった原疾患を一番に考えること。既往はあくまで既往。

その上で。日本で伝統的に?行われている消化器外科術後のステップアップ食は、世界的に見ても段階が多いと言われています。以下、文献引用します。

「 本邦では、特に消化器術後をみると、流動食の重湯からはじまり、徐々に粥の水分が減り、米粒の割合が高くなっていくという、きめ細やかな術後食のシステムを踏襲してきた。重湯、3 分、5 分、7 分、全粥、常食の 6 ステップが最も一般的ではあるが、全粥の次の段階として軟飯がある施設、7分粥の段階がない病院などもある。本邦の術後食の起源に関しての定説はないが、腸チフスの回復期の治療食のシステムを、そのまま手術後に応用し、現在の術後食の体系が形成されたという説がある。文献的にみると昭和 6 年の陸軍軍医団による食餌療法網要に、現在と同様の重湯、3 分、5 分、7 分、全粥のステップアップの術後食が登場し、記載されている。実際の術後食の提供の仕方は、最近まで、たとえば幽門側胃切除術の場合は、術後の排ガスをみて、術後 4-5 日目くらいから水分の摂取が開始され、術後食は重湯から 1 日 1 ステップ、胃全摘の場合は、2 日に 1 ステップずつあげていくのが一般的であった。本邦のこの術後食システムは従来からの踏襲で、科学的根拠に乏しく、慣習として術後患者に提供されてきたものである」

参考文献:外科と代謝・栄養49巻5号2015「術後の食事と代謝栄養」 丸山 道生

ERAS(Enhanced Recovery After Surgery)の普及により、その流れも大分変化が起きているようです。もちろん、手術技術の向上や内視鏡の発展等があってこそと言われています。

今までは結腸癌に限られていた ERAS プロトコルでしたが、胃切除後、膵頭十二指腸切除後に関する ERAS ガイドラインが提唱され、早期経口栄養が推奨されるに至っています。胃切除後においては、早期経口栄養による有害事象が増えるという報告はないことなどから、1 日目からの経口食の開始が勧められているとのことです。

ただ、そこで考慮すべき事項として、①術後の腸管麻痺の回復を早める対策②早期経口栄養による異化亢進の抑制③術後のエネルギー・タンパク質強化④術後の 誤嚥防止策などが挙げられています。

私たちSTに特に関連するのはやはり誤嚥。

「高齢者の手術が増加しているため、嚥下機能が潜在的に悪い患者の手術が多くなっている。術後は絶食による廃用も加わり、誤嚥しやすい状態になっていることを考慮する。誤嚥のリスクのある症例では、水やお茶は避け、はじめから嚥下用の食事やゼリーなどから開始する等の配慮が妥当」

と、上述の文献では言われています。誤嚥防止が最重要課題であれば、初めから嚥下食でも構わないと思います。もちろん主治医と方針をすり合わせての話ですが。

今回の治療の大目的は何なのか。そして治療した先に戻るべき生活はどこなのか。その患者さんを取り巻く様々な事情を考慮して、優先すべき項目が決定してくる。どんな疾患でも当たり前のことですが。いつも言っていますが、まずはセラピストとして患者さんの未来を考えること。そして何を目標に介入するのか、そこを明確にすること。そのためのツールとしてどんな提案をするのか、どのようなリハビリの手技を使用するのか、は構わないとは思います。

自分の提供しているリハビリが、目標とリンクしていないがために、ただの作業にならないように。絶えず振り返りながら日々の臨床を行っていきたいものです。

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